遺言書の作成

■遺言書とは
遺言とは、自分の死後に行われる相続に備えて、生前の段階にあらかじめ行っておく意思表示のことを指します。そのため、遺言者が亡くなって相続が開始されてはじめて、その遺言の効力が発生するという仕組みになっています。そして、かかる遺言を書面にしたものを遺言書といいます。遺言書を作成しておくことで、遺言者の意思表示通りの相続手続きが行われることになります。しかし、遺言書を作成すれば必ずその内容通りに事が進むとは限りません。なぜなら、遺言書は正しく作成しないと法的拘束力を持たないからです。法的拘束力を持たせるためには、きちんとした形式の正しい遺言書を作成する必要があります。

 

●遺言書を作成しておくメリット
遺言書を作成するメリットの1つとしては、相続人同士のトラブルを防止することができるという点が挙げられます。なぜなら、遺言書を作成することで、遺産分割方法の決定にあたり遺言者の意思を反映することができるため、相続人の意思を介在させずに遺産分割方法を決定できるからです。
分かりやすく言えば、本来遺言書がなければ相続人同士で話し合いをして遺産分割方法を決定しなければなりませんが、遺言書があればその内容通り、すなわち遺言者の意思表示通りに遺産分割が進むため、トラブルが発生しにくいということです。遺産分割協議を行うと、話し合いの中で親族同士が争いになることもしばしばあります。そのような将来の親族同士の争いを防ぐことは大きなメリットといえるでしょう。

 

また、遺言書がない場合に、遺産分割協議を行わなければならないことは既述の通りですが、協議を行うにあたっては、相続人の調査や相続財産の内容の把握といった事前準備が不可欠となります。かかる事前準備は戸籍謄本を取り寄せる等の手間を要し、多数の手続きを行わねばならない相続人にとっては大きな負担となります。しかし、遺言書を作成すればこの過程は不要となるため、かかる手間を将来的に相続人に負わせずに済みます。この点も、遺言書を作成するメリットといえます。

 

しかし、このようなメリットも正しい遺言書を作成してこそ意味があるものです。適式でない遺言書は無効となり、法的拘束力を持ちません。そのため、自分が作成したい遺言書の作成方法をしっかりと知り、それを守って作成する必要があります。次では、遺言書の作成方法について確認していきましょう。


●遺言書の作成方法
そもそも遺言書は1つの形式だけではありません。①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言という3つの種類があり、どれかを選択して作成することとなります。それぞれの作成方法について説明していきます。

 

①自筆証書遺言
「自筆」証書遺言という名前の通り、遺言者本人の自筆によって作成していく方法です。遺言書に記載する全ての文章や署名・日付等を自筆し、押印します。代筆は認められていません。一番手っ取り早い方法ではありますが、自筆となると、やはり内容や形式に誤りがある可能性も高くなります。
2019年11月から、全てを自筆とする必要はなく、遺産目録については、PCでの作成や、預貯金の通帳や登記事項証明(不動産の場合)のコピーなどを利用してもいいことになりました。但し、全てのページに署名と捺印が必要です。

 

また、2020年7月から、法務局における「自筆証書遺言書保管制度」が導入されています。この制度は、これまで自筆証書遺言にありがちだった、作成されたかどうかが分からない、作成されたはずだが見つからない、などといった不都合を避けることができます。
また、家庭裁判所における検認が不要となるという点で相続手続が容易になるという利点があります。

 

②公正証書遺言
公証人に遺言書を作成してもらうという方法です。遺言者は証人と共に公証役場に行き、証人の立会いの下、公証人に対して遺言の内容を伝えます。公証人は、遺言者の伝えた内容を聞きながら、その場で遺言書を作成していきます。法律の知識を有した公証人の作成するものですから、基本的に適式で有効な遺言書となりますし、公証人による中身の精査も受けることができる有用な方法といえます。

 

③秘密証書遺言
遺言者が自分で遺言書を作成した後に、それを公証役場に持参します。そこでも証人の立ち会いが必要となり、公証人によって遺言書の存在が確認・保証されるという仕組みを採ります。この方法では、遺言書の内容を知られずに済み、なおかつ遺言書の存在を公的に保証してもらうことができるのです。


以上のように、自筆証書遺言の作成が以前より容易になり、また保管制度が始まったことで、今後は、これまでと比べて自筆証書遺言を利用する割合が増えてくることが予想されます。ただ、一般の方がご自分だけで自筆証書遺言を作成することは、必要な事項を見逃してしまっていて、遺言書が無効になる危険性があります。この点は、新しい制度になっても同様です。そのため、遺言書を作成される場合には、必ず弁護士に相談されることをお勧めします。

 

弁護士 寺岡幸吉は、遺言書に関するご相談を幅広く承っております。遺言書の形式や、記載内容等についてお困りの際には、ぜひお気軽に当事務所までお問い合わせください。

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