会社が労災を認めてくれない場合の対応
業務中または通勤中のケガや病気などは、それが業務や通勤を起因とする限り、労災保険の対象となります。しかし、被災者が労災申請を行っても、会社が労災を認めず、同意または承認してくれないことがあります。このような場合に、被災者はどのような対応を行えばよいのでしょうか。
具体的に言えば、次の通りになります。
労働者が労災により負傷等をした場合は、休業(補償)給付等の労災保険給付の請求(労災保険法12条の8第1項、21条)を労基署長に対して行うことになります。その際、労働者は請求書に必要事項を記載しなければなりませんが、記載事項の中に事業主(会社)の証明を必要とするものがあります(同法施行規則12条の2第2項等)。会社は申請手続きの煩雑さや、労基署の事故調査、保険料の増額などを嫌い、労災と認めず、上記証明を行わないことがあります。
このような場合は、労働者が直接、労基署へ行って労災申請を行いましょう。
会社による上記証明が欠けたまま申請を行うことになりますが、会社が証明を行わない事情などを説明すれば会社の証明なしでも申請できます。
一般的な慣行として、労災申請は会社が被災者に代わって請求書を作成し、労基署に提出しますが、これは被災者が本来行うべき手続きを会社が代行しているにすぎず、会社の関与がなければ労災申請ができないわけではありません。
また、労災の認定も労基署が行うもので、会社が行うものではありません。
そのため、会社が労災を認めない場合は、まずは労基署の窓口に相談して、必要書類や記入の仕方を教えてもらいましょう。
弁護士 寺岡幸吉は、社会保険労務士としての経験を活かし、労働災害をはじめとした労働問題に関する様々なご相談を承ります。
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