障害等級に不服がある場合はどうしたらいい?
後遺障害等級に認定された場合でも、認定された等級が思った以上に低い(障害の程度が軽いと判断される)ことがあります。その認定に不服がある場合は、どうすればよいのでしょうか。
等級が一つ異なるだけでも支給金額は大きく異なり、特に第7級か第8級かによって年金か一時金か区別されるため、問題となります。
障害等級の認定に不服がある場合は、その決定を行った労基署長を管轄する都道府県労働局の労災保険審査官(審査官)に対して審査請求等を行うことができます(労災保険法38条1項、労働保険審査官及び労働保険審査会法(以下「特別法」という)参照)。
不服申立ての方法にはいくつか種類がありますが、労災保険法によって、まず「審査請求」を行い、その後「再審査請求」または「行政訴訟」の順番で不服申立てを行うことが求められています(38条1項、40条)。
●審査請求
まず、審査請求を行って、上記の審査官に対し、もう一度審理するように求めます。
注意すべきなのは、審査請求には不服申立期間が定められており、労基署が上記決定を行った事を知った日の翌日から3ヵ月以内に行う必要があります(特別法8条1項)。
審査官が労基署の判断を違法または不当と判断した場合、労基署の処分の全部または一部を取り消します。他方、違法でも不当でもないと判断したときは、審査請求を棄却します。
●再審査請求
審査請求を行っても納得のいく判断がなされなかったときは、再審査請求を行って労働保険審査会に対して、さらにもう一度審理するよう求めることができます。
この再審査請求は、上記審査請求の判断が記載された決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヵ月以内に行う必要があります(特別法38条1項)。
再審査請求では労働保険審査会が労基署の処分が違法ないし不当かどうかを判断します。
●行政訴訟
審査請求に対する判断に満足いかない場合は、行政訴訟を提起して、労基署長の処分決定に対する取消訴訟を提起することができます(行政事件訴訟法3条2項等参照)。
行政訴訟では、裁判所が労基署長の処分決定の違法性を審査するため、中立公正な判断を期待できます。他方で、結論が出るまで時間や費用がかかるため、相当程度覚悟して訴訟に臨まなければなりません。
取消訴訟は、審査請求の裁決があったことを知った日から6ヵ月以内に提起しなければなりません(行訴法14条3項)。
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