労災保険以外の補償を受けられる可能性(損害賠償請求・慰謝料)
業務中または通勤中にケガなどの損害を受けたときは、労災保険以外の補償も受けられないかを検討してみましょう。具体的には、慰謝料などの「損害賠償請求」ができないかを考えてみましょう。
●損害賠償請求
労災保険の対象とならない損害を受けたケースや、労災保険の対象となるものの保険による補償だけではカバーできないような損害を受けたケースなどでは、損害賠償請求をできる可能性があります。
損害賠償請求の法的根拠としては、不法行為責任(民法709条など)や、安全配慮義務違反に基づく債務不履行責任(民法415条)があります。訴訟では両者を共に主張するケースが多いとされています(請求権の消滅時効の点で、後者の方が有利とされていますが、2017年(平成29年)民法改正によって2020年4月以降、生命・身体の侵害による損害賠償について両者の消滅時効期間は統一されました(改正法166条、167条、724条の2)。
損害賠償請求を行うためには、使用者側の故意・過失(ないし使用者側の責めに帰すべき事由)が認められなければなりません。また使用者側の過失行為等と、被災者側の損害との因果関係、さらには損害額の立証もしなければならず、被災者自身に過失がある場合には、その過失の割合だけ賠償金が減額されます(過失相殺。民法418条、722条2項)。
第三者の行為により被災した場合も基本的には同じです。
なお、すでに労災保険を受けている場合は、賠償金から給付額が差し引かれます(労基法84条、労災保険法12条の4第2項参照)。
●慰謝料請求
また、生命・身体に対する損害だけではなく、精神上の損害も受けた場合は、慰謝料請求を行うことが出来ます。特に労災保険では慰謝料は支給されないので要注意です。治療期間が長引いたり障害が残ったりした場合や、死亡した場合などは、慰謝料が高額になる可能性が高いので、慰謝料請求を考えるべきです。
弁護士 寺岡幸吉は、社会保険労務士としての経験を活かし、労働災害をはじめとした労働問題に関する様々なご相談を承ります。
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