成年後見制度が必要になる、典型的な場合
先週の真田丸では、秀吉が亡くなりました。真田丸では、秀吉は認知症であったかのような描かれ方をされていましたね。
秀吉の晩年の奇行の原因については、昔からいろいろな説が唱えられてきましたが、認知症に対する認知度が高い現在においては、秀吉認知症説は、一般に受け入れやすい面があるのでしょう。
私は、高齢者問題を業務の大きな柱にしていることがあって、認知症の高齢者ご自身や、そのご家族から多くの相談を受けます。認知症に関してのご相談で最も多いのは、やはり、成年後見の制度についてです。
よく受ける相談の例を挙げてみますと・・・
認知症がひどくなり、本人同伴でも預金が下ろせない。
高齢者からのご相談ですと、夫(または妻)の認知症がひどくなって、銀行の窓口に認知症の夫や妻を連れて行ってお金を下ろそうとしたが、銀行からは、今の病状ではお金を下ろすことはできないと言われたという場合があります。
銀行取引をするには、ご本人が、その銀行取引をすることの意味を理解できていることが必要です。この能力を、「事理弁識能力」と言います。認知症がひどくなると、この「事理弁識能力」がなくなってしまいます。事理弁識能力のない人について、お金を下ろすことに応じてしまうと、場合によっては、銀行は責任を問われる可能性が出てきます。そのため、「お金を下ろすためには、成年後見の手続をして下さい。それまではお金は下ろせません。」という銀行が増えてきました。
何年か前であれば、ご本人が認知症であっても、銀行は割合柔軟な対応をしていました。現在でも、そのような銀行があるという話を聞くこともあります。しかし、これからは、法律の原則どおり、成年後見の手続を求める銀行が増えてくると思われます。
伴侶が他界し、子どもとの間で遺産分割協議の必要が発生。
高齢者夫婦の、夫または妻が亡くなって、お子さんとの間で遺産分割協議が必要になる場合があります。
遺産分割協議をするためには、やはり事理弁識能力が必要です。そのため、遺産分割協議をする前提として、成年後見の手続が必要になる場合が、多くあります。
ところで、成年後見人には、親族がなることもできますが、成年後見の目的が遺産分割協議である場合には、弁護士などの法律専門職が選任されるのが一般的です。家庭裁判所に成年後見の申立をする場合に、この人に成年後見人になって欲しい(あるいは、申立人自身が成年後見人になりたい)という、希望を述べることはできますが、裁判所は、その人が後見人としてふさわしくないと判断した場合には、別の人(弁護士など)を選任することができます。
(注)「事理弁識能力」と似た言葉で、「意思能力」という言葉があります。この二つは、似てはいますが、細かい点では違いもあります。上の文章でも、「事理弁識能力」ではなく「意思能力」という言葉を使った方が正確な面があります。しかし、一般の方にとっては、この両者の違いは、あまり大きな意味を持たないと思われることや、成年後見との関係では「事理弁識能力」という言葉が多く使われることから、上の文章では、「事理弁識能力」という言葉を使っています。
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