労災隠しについて
労働災害が発生しても、会社が労災を認めず、労基署への報告を行ってくれないことがあります。いわゆる「労災隠し」であり、決して珍しいことではありません。
会社が労災隠しを行う理由としては、次のことが考えられます。
・労災が起きたことで、企業のイメージが悪くなる
・労災申請の手続きが煩雑
・労災の保険料が上がり、負担となる
・労基署によって、事故の調査が行われ、場合によっては行政指導などが行われる
このようなリスクがあるため、会社は労災が発生しても、被災者の治療費を全額負担するなどして、出来るだけ労災申請や、労基署への報告を行わないことがあります。
もしかしたら、あなたも、会社から「補償は全部会社がするから、労災申請はしない。」などと言われるかもしれませんが、これに応じてはいけません。例えば、当初はすぐ治ると考えていたのに、実際には治療が長引いた場合や、障害が残った場合など、会社がきちんと補償してくれるとは限りません。
それだけでなく、労災隠しを行うことで、結果的に会社にデメリットが生じることにもなります。
まず、労災隠しは犯罪であり、労災の報告を怠った場合や、虚偽の内容を報告した場合などでは、50万円以下の罰金に処されます(労働安全衛生法120条5号)。労働基準監督官や労基署長は司法警察員として逮捕・送検できる権限を有しているため、労災隠しが発覚すれば、書類送検等の処分を受けることになります。
また、労災隠しが発覚することで、企業イメージがすこぶる悪くなるでしょう。これは労災が発生した際の企業イメージ悪化の比ではなく、メディアやSNSで情報が出回ることで、取引先からの信用も失い、大きな経済的損失が生じる可能性があります。
そのため、労災申請や労基署への報告は負担となりますが、しっかり行うことが必要です。
弁護士 寺岡幸吉は、社会保険労務士としての経験を活かし、労働災害をはじめとした労働問題に関する様々なご相談を承ります。
川崎市、横浜市、大田区、品川区など、神奈川県や東京都にお住まいの方のご相談に広くお応えいたします。
労働災害・労災保険でお悩みの方は、当職までご相談下さい。
弁護士寺岡が提供する法律知識
-
不当解雇とは
不当解雇とは、解雇条件を満たしていないか、解雇の手続きが正確でない解雇のことで、労働基準法・労働契約法等の法律の規定や、就業規則の規定を守らずに、使用者の都合で一方的に労働者を解雇することをいいます。 会社の経 […]
-
通勤中の事故は労災と...
労災保険の対象となる災害の中に、「通勤災害」というものがあります。通勤災害とは、労働者が通勤中に被った負傷、疾病、障害又は死亡のことをいいます(労災保険法7条1項2号)。負傷などの災害は、通勤中に一般的に生じる可能性があ […]
-
ハラスメントの種類や...
「ハラスメントについて法改正が行われたと聞いたが、どういった内容なのだろうか。」「パワハラやモラハラにあたる言葉と指導をどのように区別すればよいのか分からない。」ハラスメントについて、こうしたお悩みをお持ちの方は決して少 […]
-
遺言書の作成
■遺言書とは遺言とは、自分の死後に行われる相続に備えて、生前の段階にあらかじめ行っておく意思表示のことを指します。そのため、遺言者が亡くなって相続が開始されてはじめて、その遺言の効力が発生するという仕組みになっています。 […]
-
就業規則の作成
1 就業規則とは就業規則とは、一言で言えば、職場の規律や労働者の労働条件などについて、使用者が定める規則です。就業規則で定めなければいけない事項は法律で定められており(労働基準法89条)、その範囲はかなり広範です。以下、 […]
-
労災の手続き、会社任...
労災が発生したとき、労災申請の手続きを被災者ではなく会社が行っているというのが、一般的な慣行でしょう。 被災者はしばらく休業しなければならないケースも多く、煩雑な手続きを会社が行ってくれるというのは一見して有難 […]